君は
あの大都会の喧騒の中から
ぼくの静かな村にきた

「雪を見にきたのよ」
と 恥ずかしそうに君は言った

雪はすっかりなくなってしまったというのに

「よく小説できく名前だから
もっと大きい駅なのかと思っていたわ」と、君は言う

「この駅は登山家だけが利用する駅だから」と、僕は答える

「ああ、そうか」
と 君は 妙に納得したような顔をしながら うなづいた
「でも、ここから見える北アルプスは・・・やっぱり きれいだわ

そう言って 眩しそうに 目を細めて
遠くの山を見つめる君の方が きれいだ
と ぼくは 思った

「君は 以前より また若くなったみたいだ」
と ぼくが 言うと
君は 真っ赤な顔をした

「ありがとう 
私の頭の中 昔のままだから
だから きっと 若くみえるんだわ」
と 恥ずかしそうにうつむいた

照れている君は とてもかわいい

でも ぼくは 何も言わなかった

少し 気まずい雰囲気が流れた

何かを喋らなければ いけない
でも いい言葉が思いつかない

君を 想う心ばかりが 膨らんでいく

君もそうなのだろうか

普通の恋人同士のように 手をつなげればいいのに
普通の恋人同士のように 肩を寄り添えればいいのに

そんなことばかりが 脳裏をかすめる

君もそうなのだろうか

うつむいていた君が ふいに顔をあげた
瞳がうるんでいる

「もう帰ろうかな」
と 君は言った

帰り際 君は 駅のホームで
ぼんやりとしていた
ぼくが そばにいるというのに

「あの山は どこもかしこも 人間に知られてしまっているの?

「そうだよ どこもかしこも みんな探検済みさ」

「つまんないわ
ほんと つまんない
どうして みんなで踏み荒らすのかしら
そのままに してあげていればいいのに」
「写真でしか 雪の景色しか見たことがなかったけど・・・
           もっと きれいなところだと思っていたわ」

「そうだね・・・」
僕は、不服ながらもそう答えた。
君は 4時間も電車に揺られて来たんだから
少しぐらいの暴言とわがままは許してあげる
君は 電車に乗った
お別れの握手ぐいしたい
お別れのキスぐらいしたい

でも 君は ぼくの手も握らず
ぼくに ウィンクもせず
電車のドアの向こうで 小さく手を振った

「さようなら また 来るわ」
と 君の唇が動いた


その日は ほんとに くるのだろうか


これから どうなるのだろう

あなたを好きになって
これから ぼくは どうしよう

君を好きになって・・

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